駅や商業施設などで当たり前のように目にする男性用の小便器。そのシンプルな見た目とは裏腹に、衛生的かつ効率的に洗浄するための、考えられた構造が隠されています。特に、自動で水が流れるセンサー式の仕組みは、その代表例です。 古くからあるのが、ボタンを押して水を流す「フラッシュバルブ式」です。これは、水道管に直結したバルブ(弁)を、ボタンを押す力で物理的に開け、水道の水圧をそのまま利用して便器を洗浄するという、非常に単純明快な構造です。 これに対し、現在主流となっているのが「センサー式」です。小便器の上部や壁に埋め込まれた黒いセンサー部分には、目に見えない赤外線を発信する装置と、それを受信する装置が内蔵されています。人が前に立つと、体から反射された赤外線をセンサーが受信し、「人がいる」と認識します。そして、その人が離れて赤外線の反射がなくなったことを検知すると、それを合図に「電磁弁」という電気で開閉するバルブを作動させ、自動で水を流すのです。この構造により、ボタンに触れる必要がなく衛生的であると同時に、人が離れた後にだけ流すことで水の無駄遣いを防いでいます。 さらに、究極の節水として「無水小便器」も登場しています。これは、尿より比重が軽い特殊な液体で排水口に蓋をしたり、尿が流れる時だけ開く特殊な弁を設けたりする構造で、水を一切使わずに下水の臭いをシャットアウトします。 一見単純な小便器も、より衛生的で環境に優しくあるために、電気技術や流体力学を応用した様々な構造の進化を遂げているのです。