トイレの故障で業者を呼び、ようやく一安心と思ったのも束の間、提示された見積書の金額を見て血の気が引く。そんな経験をしたことがある人は少なくないかもしれません。緊急事態という弱みに付け込まれたかのような高額な料金に、納得できないまま契約してしまい後悔するケースは後を絶ちません。どこに修理を頼むかという問題と同じくらい、納得できない見積もりをどう断るかという知識は、自分自身を守るために不可欠なスキルです。 まず、大前提として理解しておくべきは、見積もりを出してもらった段階では契約は一切成立しておらず、依頼者には断る権利が当然あるということです。業者が自宅まで来てくれたことに引け目を感じたり、断ったら気まずいという気持ちになったりする必要は全くありません。あなたの財産を守るための、正当な権利なのです。 では、具体的にどう断れば角が立たないのでしょうか。最も使いやすいのは「少し考えさせてください」あるいは「家族と相談してからでないと決められません」というフレーズです。その場で即決できない理由を伝えることで、冷静になる時間を作ることができます。より直接的に「申し訳ありませんが、思ったより予算オーバーなので今回は見送らせていただきます」と金銭的な理由を正直に伝えるのも有効です。相手もビジネスですから、予算が合わない顧客を引き留めることはあまりありません。 ただし、注意点もあります。業者を呼ぶ段階で「出張費」や「見積もり料」が無料であることを確認しておくのが理想です。もし有料であると事前に説明を受けていた場合は、断る際にその料金を支払う義務があります。万が一、業者が断っているのに帰らなかったり、高圧的な態度で契約を迫ってきたりした場合は、きっぱりと「お引き取りください」と伝え、それでも解決しない場合は消費者センターや警察に相談することも視野に入れましょう。 納得できない契約にサインしない勇気。それこそが、悪質な業者から身を守る最後の砦です。業者を選ぶ段階で慎重になることはもちろん、いざという時に毅然と断る準備をしておくことが、後悔のないトイレ修理につながるのです。