ある築十年の戸建て住宅で発生したバリウム詰まりの事例は、多くの人にとって非常に重要な教訓を含んでいます。この家の住人である五十代の男性は、健康診断を受けた後に排泄されたバリウムが便器内に一筋の線となって残っていることに気づきましたが、仕事が忙しかったこともあり、そのうち流れるだろうと放置して通常の生活を続けていました。ところが、数日後からトイレの水を流すたびに水位が異常に上がり、ゆっくりとしか引かなくなる現象が起き始めました。不審に思った男性が市販の詰まり取り薬剤を投入しましたが、バリウムは無機物であるため化学反応は一切起きず、事態は改善しませんでした。そして一週間後、家族がトイレを使用した際についに汚水が逆流し、床一面が水浸しになるという惨事が発生したのです。急行した業者がファイバースコープカメラで配管内を調査したところ、便器の出口付近の曲がり角に、白く巨大なバリウムの塊が排水路を七割近く塞ぐ形で固着していました。さらにそのバリウムの表面には、一週間分のトイレットペーパーの残骸が層のように重なり、強固な壁を作っていたのです。結局、このトラブルを解決するために便器を一度取り外す「脱着作業」と、専用機材による高圧洗浄が必要となり、修繕費用は合計で八万円を超えました。作業員の話では、バリウムが付着した直後にぬるま湯を流すなどの処置をしていれば、このような事態にはならなかったとのことでした。この事例が示す恐ろしさは、バリウムそのものの汚れよりも、それが「核」となって他のゴミを吸寄せ、雪だるま式に詰まりを巨大化させる点にあります。「そのうち流れる」と信じて待った一週間は、バリウムが排水管の中でコンクリート化し、他の汚れを捕食して成長するための十分な時間を与えてしまったのです。トイレは流せば何でも消えてくれる魔法の穴ではありません。特にバリウムのような特殊な物質を体外へ排出した後は、それが確実に公共の下水道まで届いたかを確認するまでの責任を持つべきです。たった数ミリの白い汚れが、最終的には家財を汚し、多額の出費を強いる大惨事の引き金になるという事実に、私たちはもっと真摯に向き合う必要があります。
便器に張り付いたバリウムをそのうち流れると放置して起きた実害の記録